2025/06/14 09:36

神社にお参りした後、「なんだか落ち着かない」「気分が晴れなかった」という経験をされたことはありませんか?

神社と人との間に"ご縁"や"波長"のようなものを感じ、それを「相性」という言葉で表現される方は確かに多くいらっしゃいます。

宮司として長年神社に携わってきた経験から、今回は神社との相性の意味や感じ方の背景、そして本当に大切にしたいことについて、率直にお話しさせていただきます。神社巡りをされる方や、参拝に不安を感じたことがある方のお役に立てれば幸いです。


そもそも「神社の相性」ってどういう意味?


神社の「相性が良い・悪い」という表現は、医学的や科学的な根拠に基づくものではなく、あくまで感覚的なものや精神的なご縁を表す言葉として使われています。

参拝したときに「心が安らぐ」「なぜか落ち着く」「また来たいと思う」といった心地よい感覚があれば、多くの方がそれを"相性が良い"と感じられます。

反対に、なんとなく空気が重く感じたり、気持ちが沈んだり、早く帰りたくなったりしたときは、"この神社とは合わないのかも"と不安になってしまうかもしれません。

ただし、宮司としてお伝えしたいのは、これは必ずしもその神社と「合っていない」からではないということです。参拝時の体調や心の状態、天候、時間帯、その日の出来事などが大きく影響している場合も多いのです。

例えば、仕事で疲れ切った平日の夕方と、気持ちの良い休日の朝では、同じ神社でも受ける印象が全く違うことがあります。これは決して珍しいことではありません。


「相性が悪い神社に行ってはいけない」は本当?


この質問については、宮司として明確にお答えします。「相性が悪い神社に行ってはいけない」という考えは、必要以上に気にしなくて大丈夫です。

神社は本来、どなたでも安心して参拝できる"開かれた聖域"です。私たち神職は、すべての参拝者を心から歓迎いたします。

どの神様も、私たちの幸せや安全を願ってくださる慈愛深い存在です。人間が感じる「相性」で参拝者を拒んだり、害をなしたりするようなことは決してありません。

ただし、もし参拝中に強い違和感や不快感を覚えた場合には、無理に長居をせず、一度心を整えてから改めて参拝されることをお勧めします。体調が優れないときや心が乱れているときは、まずはご自身を大切にしてください。

何より大切なのは、神社との相性よりも「敬意を持って手を合わせる気持ち」なのです。


なぜ神社に「相性」を感じることがあるのか?


では、なぜ人は神社に対して「相性」のようなものを感じるのでしょうか。宮司として参拝者の方々とお話しする中で、いくつかの理由が見えてきました。

まず、人は自然に囲まれた静寂な空間や神聖な場所に身を置くことで、普段よりも心の状態が繊細になることがあります。神社の雰囲気、木々の匂い、風の音、祭神の歴史や社殿の様式などが、自分の内面と響き合うかどうかで「相性」を感じるのかもしれません。

また、神社ごとにお祀りしている神様の特徴やご利益に違いがあります。学業成就を願うなら菅原道真公(天神様)、縁結びなら大国主大神、商売繁盛なら稲荷神...というように、自分の願いごとや人生の状況と、その神社のご祭神の御神徳が重なることで、より深いご縁を感じるということもあるでしょう。

さらに、生まれ育った土地の氏神様や、人生の節目でお世話になった神社には、特別な親しみを感じるものです。これも一種の「相性」と言えるかもしれません。

私自身も、全国の様々な神社にお参りする中で、「ここは特別に心が落ち着く」と感じる場所があります。それは決して神秘的なことではなく、その神社の歴史や風土、そして自分の体験が重なり合って生まれる、とても自然な感情なのだと思います。


自分に合った神社を見つけるヒント


神社との相性は、頭で考えて「この神社が一番良い!」と決めるものではなく、心が自然と惹かれる場所に素直に身を任せるのが一番だと私は考えています。

気になる神社があれば、理由がなくても一度足を運んでみてください。

「なんとなく気になる」という直感も、立派なご縁の始まりです。

参拝後の自分の気持ちや体の変化を観察してみましょう。

心が軽やかになったか、穏やかな気持ちになれたか、素直に感じてみてください。

その神社の神様や由緒について少し調べてみることもお勧めします。

神様の御神徳や神社の歴史を知ることで、より深いつながりを感じられるかもしれません。

季節や時間帯を変えて再訪してみてください。

朝の清々しい空気の中での参拝と、夕暮れ時の静寂な中での参拝では、全く違った印象を受けることがあります。

地元の氏神様への参拝も大切にしてください。

遠くの有名な神社も良いですが、まずは身近な氏神様とのご縁を深めることから始めてみてください。

こうした体験を重ねる中で、「ここは自分にとって特別に落ち着く」「また来たいと自然に思える」という神社があれば、それがあなたにとってご縁の深い神社なのかもしれません。


まとめ|相性より大切なのは"敬う心"


神社に対して相性のようなものを感じるのは、とても自然で人間らしいことです。そうした感覚を大切にしていただくのは良いことだと思います。

けれども、宮司として最もお伝えしたいのは、「合う・合わない」にとらわれすぎず、感謝と敬意をもって参拝する心こそが一番大切だということです。

たとえ初めて訪れる神社であっても、心を込めて手を合わせ、日頃の感謝や願いを込めてお参りすれば、その神様とのご縁はきっと結ばれていきます。

神社は決して敷居の高い場所ではありません。どの神様も、参拝者の真心を温かく受け取ってくださいます。相性を気にしすぎて参拝を遠ざけてしまうのではなく、まずは素直な気持ちでお参りしてみてください。

あなたにとって"心が安らぐ特別な神社"との出会いがありますように。そして、神社巡りがもっと楽しく、心豊かなものになりますよう、心から願っております。