2025/06/27 13:41
「あっ!御朱印帳を忘れてしまった……」
せっかく楽しみにしていた神社参拝で、こんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。特に遠方の有名な神社や、一度は訪れてみたかった神社での出来事だと、本当にがっかりしてしまいますよね。
私も長年宮司を務めさせていただく中で、「御朱印帳を忘れてしまったのですが…」と困った表情でお声がけいただく参拝者の方を数多く見てまいりました。そのたびに、「せっかくお参りに来てくださったのに」という気持ちになります。
でも、ご安心ください。御朱印帳を忘れてしまった場合でも、多くの神社では温かい対応をさせていただいております。今日は、そんな時の正しい対処法や知っておいていただきたいマナーについて、お話しさせていただこうと思います。
御朱印帳を忘れたときの対応について
御朱印帳を忘れてしまった場合、まずは落ち着いて社務所にお声がけください。「恐れ入ります、御朱印帳を忘れてしまったのですが…」と、素直に事情をお伝えいただければと思います。
多くの神社では、そのような場合に備えて、いくつかの代替対応をご用意しています。最も一般的なのは、「書き置き御朱印」をお渡しする方法です。これは、あらかじめ神社の方で美しい和紙に御朱印をお書きしたもので、後からご自分の御朱印帳に貼っていただくことができます。
また、神社によっては、その場で別の和紙に直接お書きしてお渡しすることもあります。これは、書き置きとは違って、その方のためだけにその場でお書きするもので、より特別感のある御朱印となります。
さらに、「後日御朱印帳をお持ちいただければ、直接お書きします」という対応をしてくださる神社もあります。近くの神社であれば、改めて御朱印帳を持参して伺うのも良いでしょう。遠方の場合は、郵送で対応してくださる神社もありますので、お尋ねしてみてください。
書き置きの御朱印をいただいた場合、帰宅後に御朱印帳に貼る際は、サイズをよく確認してから貼るようにしましょう。神社によって書き置きのサイズが微妙に異なることがあり、無理に貼ろうとすると御朱印帳からはみ出してしまうことがあります。もしサイズが合わない場合は、専用のアルバムに保管するのも一つの方法です。
気をつけていただきたいマナーについて
御朱印帳を忘れたからといって、何でも良いというわけではありません。時々、手帳やノート、メモ帳などに御朱印をお書きしてほしいとお願いされる方がいらっしゃいますが、これは基本的にお受けできません。
御朱印は、単なる記念スタンプではなく、神様からの尊い印として授与させていただくものです。そのため、書かせていただく紙面にも一定の神聖さが求められます。日常的に使用する手帳やノートでは、その意味合いが薄れてしまうのです。
また、御朱印は必ず参拝をしていただいた後にお授けするものです。「御朱印帳を忘れたから、とりあえず御朱印だけもらって帰ろう」という考えではなく、まずは心を込めて参拝していただき、その後で御朱印についてご相談いただければと思います。
社務所でお尋ねいただく際も、「忘れてしまったのですが、何か方法はありますでしょうか」と丁寧にお伺いする姿勢が大切です。神社側も、そのような謙虚な態度の参拝者の方には、できる限りのご対応をさせていただきたいと思うものです。
事前の準備と工夫について
神社巡りをよくされる方には、いくつかの準備をしておくことをおすすめします。
まず、メインの御朱印帳とは別に、小さめの予備用御朱印帳をバッグに入れておくという方法があります。これなら、うっかり忘れてしまった時も安心です。最近では、コンパクトで持ち運びしやすい御朱印帳も多く販売されています。
また、書き置き御朱印専用のクリアファイルやアルバムを用意しておくのも良いでしょう。書き置きをいただいた場合、そのまま持ち帰ると折れてしまったり、汚れてしまったりする可能性があります。専用のファイルがあれば、美しい状態で持ち帰ることができます。
近年は、書き置き御朱印を美しく保管できる専用のアルバムやファイルも多く販売されています。中には、御朱印帳に貼らずに、書き置きのまま専用アルバムで楽しまれる方もいらっしゃいます。これも御朱印の楽しみ方の一つだと思います。
スマートフォンのメモ機能やアプリを活用して、参拝予定の神社を事前にチェックしておくのも良いでしょう。「明日は○○神社に参拝する」とメモしておけば、御朱印帳の準備も忘れにくくなります。
現代的な御朱印の授与方法
最近では、時代の変化に合わせて、さまざまな御朱印の授与方法が生まれています。
オンラインでの御朱印授与を行っている神社も増えてきました。直接参拝できない方や、遠方にお住まいの方のために、郵送で御朱印をお送りするサービスです。ただし、これはあくまで特別な事情がある場合の対応であり、可能な限り直接参拝していただくことが望ましいと考えています。
また、QRコードを使った御朱印の授与システムを導入している神社もあります。参拝後にQRコードを読み取っていただき、後日郵送で御朱印をお送りするという仕組みです。これなら、御朱印帳を忘れた場合でも確実に御朱印をいただくことができます。
当神社でも、さまざまな事情で直接お越しいただけない方のために、オンライン授与所を設けております。ただし、できる限り直接足を運んでいただき、神様の前で手を合わせていただくことが一番大切だと考えています。
御朱印帳を忘れることも一つの体験
実は、御朱印帳を忘れてしまうことも、神社巡りの一つの体験として捉えることができます。
「今日は御朱印帳を忘れてしまったけれど、こんなに美しい書き置きをいただけた」「神社の方が親切に対応してくださった」といった思い出は、かえって印象深いものとなることがあります。
また、御朱印帳を忘れたことをきっかけに、改めてその神社を訪れることになり、二度の参拝の機会をいただけることもあります。これも、神様からのご縁かもしれません。
大切なのは、御朱印帳を忘れたことで慌てたり、がっかりしすぎたりしないことです。まずは心を込めて参拝し、神様への感謝の気持ちを忘れないようにしていただければと思います。
感謝の気持ちを大切に
御朱印帳を忘れてしまった場合でも、多くの神社では温かく対応させていただきます。書き置きでの対応、後日の再訪、郵送での授与など、現在ではさまざまな方法で御朱印をいただくことが可能です。
何より大切なのは、参拝を第一に考え、神様への敬意と感謝の気持ちを忘れないことです。御朱印は、そうした真摯な参拝の証として授与されるものです。
焦らず、そして感謝の気持ちを持って対応していただければ、いただいた御朱印は一層ありがたいものとして心に残るはずです。神社巡りは、御朱印を集めることだけが目的ではありません。神様との出会い、その場所での体験、そして自分自身と向き合う時間こそが、最も大切な宝物なのです。
御朱印帳を忘れてしまった経験も、きっと後になって笑い話になることでしょう。そんな風に、肩の力を抜いて神社巡りを楽しんでいただければと思います。