2025/06/27 17:00
「厄年ってよく聞くけれど、実際に何をすればいいの?」
毎日多くの参拝者の方とお話しする中で、こうしたご質問をよくいただきます。人生の節目に訪れる「厄年」は、健康や人間関係、お仕事などに不安を感じやすい時期とも言われていますが、実はそこには先人たちの深い知恵が込められているのです。
「厄年とは何か?」をやさしく解説しながら、前厄・本厄・後厄の違い、そして神社で厄除け祈願を受ける際の流れやマナーまでを丁寧にご紹介いたします。厄年を穏やかに乗り越えるために、ぜひ参考にしていただければと思います。
そもそも厄年とは?
「厄年(やくどし)」とは、災厄や災難が起きやすいとされる人生の節目の年齢のことです。体調の変化や人間関係の転機、職場環境の大きな変化と重なることが多く、古くから注意深く過ごすべき年として受け継がれてきました。
「厄年なんて迷信でしょう?」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、実際には心身の変化が起こりやすい年齢にあたることが多いものです。男性なら42歳前後の働き盛り、女性なら30代前半の子育てや仕事の両立で忙しい時期など、確かに体調を崩しやすかったり、精神的な負担が大きくなったりする年代と重なっています。
厄年は単なる迷信ではなく、「この年齢は特に気をつけて過ごしましょう」という人生の知恵なのです。昔の人たちが経験を重ねる中で見つけ出した、生活の指針といえるでしょう。
前厄・本厄・後厄の違いとは?
厄年には3つの期間があるとされています。これは一年だけではなく、3年間かけてゆっくりと心身を整えていくという考え方に基づいています。
前厄(まえやく)は本厄の前の年です。まだ大きな変化は起きていないものの、体調面や環境面で何らかの変化の兆しが現れ始めるとされる年です。「なんとなく疲れやすくなったな」「人間関係でちょっとしたトラブルが増えたかも」といった小さなサインに気づく時期かもしれません。
本厄(ほんやく)は最も注意が必要な年とされています。災厄が起きやすいといわれ、厄除け祈願の中心となる年です。この年は特に慎重に行動し、無理をしないことが大切です。
後厄(あとやく)は本厄の翌年で、厄の余波がまだ残ると考えられています。本厄が明けたからといって油断せず、引き続き落ち着いた生活を心がける年です。
それぞれの年に意味があり、3年間を一つの区切りとして心身を整え、穏やかな日々を送ることが伝統的な考え方です。実際に、この3年間を意識して過ごされた方から「気持ちが落ち着いた」「健康に気を遣うようになった」というお声をよくいただきます。
厄年の年齢一覧(数え年)
厄年は「数え年」で数えます。これは生まれた年を1歳とし、元日に1歳を加える昔ながらの数え方です。現代の満年齢に1歳を足すと考えていただければ分かりやすいでしょう。
【男性の厄年】
【女性の厄年】
特に男性42歳、女性33歳は「大厄」とされ、最も災いが起こりやすい年とされています。この年齢は確かに人生の重要な転換期でもあります。男性なら職場での責任が重くなり、家庭でも一家の大黒柱として重圧を感じる時期。女性なら結婚・出産・育児などライフステージの大きな変化を迎える時期と重なります。
また、地域によって若干の違いがある場合もありますが、これらが一般的な厄年とされています。ご自分の生まれ年から数え年を計算して、該当する年を確認してみてください。
神社での厄除け祈願の流れ
神社では、厄年を迎える方のために「厄除け祈願」を承っています。初めての方でも安心していただけるよう、基本的な流れをご説明します。
1. 受付で申し込み
まず社務所で厄除け祈願をお申し込みください。申込用紙にお名前・ご年齢・ご住所などをご記入いただき、初穂料(祈祷料)をお納めいただきます。初穂料の金額は神社によって異なりますが、5,000円から1万円程度が一般的です。分からないことがあれば、遠慮なく社務所でお尋ねください。
2. ご祈祷を受ける
お申し込み後、拝殿にてご祈祷を行います。神職が心を込めて祝詞を奏上し、皆様の厄除けと安全をご祈願いたします。神前での丁寧な祈りを通して、心身の清めと神様のご加護をいただきます。ご祈祷中は静かに手を合わせ、心を落ち着けてお参りください。
3. お札やお守りの授与
ご祈祷後には、厄除け札やお守り、御神酒などをお授けいたします。お札はご自宅の神棚や清浄な場所にお祀りし、毎日手を合わせてお参りしてください。神棚がない場合は、タンスの上など目線より高い場所に丁重にお祀りしましょう。
4. お焚き上げのタイミング
お札やお守りは一年間お祀りした後、翌年の厄除け祈願の際や節分の時期に神社へお返しください。古いお札は「お焚き上げ」という神事で丁重にお納めいたします。一年間お守りいただいた御神徳に感謝を込めて、きちんとお返しすることが大切です。
厄年の過ごし方|気をつけたいこと
厄年だからといって必要以上に不安になったり、外出を控えたりする必要はありません。しかし、以下のような心がけで、より穏やかで充実した一年を過ごすことができます。
まず大切なのは、生活習慣を見直すことです。忙しい毎日の中で、つい睡眠不足になったり、食事を抜いたり、運動不足になったりしがちですが、厄年を機に規則正しい生活を心がけてみてください。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動は、心身の健康を保つ基本です。
また、無理な挑戦や大きな決断は避けることをおすすめします。転職や引っ越し、大きな買い物などは、できれば厄年が明けてから検討された方が良いでしょう。どうしても必要な場合は、十分に時間をかけて慎重に判断してください。
人間関係のトラブルにも注意が必要です。厄年は感情的になりやすかったり、誤解が生じやすかったりする時期でもあります。言葉遣いに気をつけ、相手の立場に立って考える余裕を持ちましょう。また、新しい人間関係を築く際も、慎重に時間をかけることが大切です。
そして、厄除け祈願や身を清める習慣を大切にしてください。神社でのご祈祷はもちろん、日々の生活の中でも感謝の気持ちを忘れずに過ごしましょう。朝夕の挨拶、家族への思いやり、周りの人への感謝など、当たり前のことを丁寧に行うことで、心が穏やかになります。
心の持ちようも厄年を乗り切る大切な鍵です。「厄年だから何か悪いことが起きるのでは」と不安になるのではなく、「この一年は特に自分を大切にしよう」「周りの人たちとの関係を見直そう」と前向きに捉えてください。神様のご加護とともに、心静かに一年を過ごしていただければと思います。
まとめ
厄年とは、体調や環境が変化しやすい年齢を「人生の転機」と捉え、慎重に過ごすための先人の知恵です。本厄だけでなく前厄・後厄も大切な期間とされており、神社での厄除け祈願は心身ともに整える良い機会となります。
宮司として多くの方の厄除け祈願をお仕えしてきましたが、厄年を「不安な年」としてではなく、「自分を見つめ直す年」として前向きに過ごされた方は、その後の人生もより充実したものになっているように感じます。
厄年に込められた意味を大切にしながら、神様への感謝と祈りの気持ちを忘れずに過ごしていただきたいと思います。皆様がこの一年を健やかに、そして穏やかに過ごされることを心よりお祈りしております。