2025/07/02 09:35

「氏神様って、神社のことですよね?」日々多くの参拝者の方とお話しする中で、このような質問をよくいただきます。また、「自分の氏神様ってどこにいらっしゃるんでしょうか?」「神社巡りはしているけれど、氏神様のことはよくわからなくて…」といったご相談も珍しくありません。

宮司として長年神社に関わってきた経験から言えることは、氏神様を知ることで、神社参拝がより深い意味を持つようになるということです。今回は、多くの方が混同しがちな「神社」と「氏神様」の違いや、氏神様の大切な役割について、わかりやすくお伝えしたいと思います。


氏神様とは?意味と役割をわかりやすく解説


氏神様は、簡単に言うと「あなたが今住んでいる地域を守ってくださっている神様」です。昔は血のつながった「氏(うじ)」という集団ごとに神様をお祀りしていましたが、時代とともに変化して、現在では住んでいる地域によって氏神様が決まるようになりました。

私がよく参拝者の方にお話しするのは、氏神様は「ご近所の神様」だということです。皆様の日常生活を一番近くで見守ってくださり、その土地に住む人々の安全と幸せを願ってくださる、とても身近な存在なのです。

氏神様の主な役割を挙げてみますと、まず地域全体の安全と発展を守ることです。自然災害から町を守り、地域が平和で豊かになるよう見守ってくださいます。

次に、そこに住む家族一人ひとりの健康や幸せを見守ることです。赤ちゃんが生まれたときのお宮参り、子どもの成長を祝う七五三、人生の節目の厄除けなど、大切な時にご報告とお願いをする相手でもあります。

私は氏神様を「人生の伴走者」のような存在だと考えています。引っ越しをすれば氏神様も変わりますが、その時々の土地で、皆様の暮らしを温かく見守ってくださる存在です。


神社と氏神様の違いとは?


この違いを理解していただくために、よく建物と住人の関係に例えてお話しします。「神社」は神様にお住まいいただく建物、「氏神様」はそこにお住まいの神様そのものです。

一つの地域には複数の神社があることがありますが、氏神様は通常お一人(神道では「一柱」と数えます)です。ただし、すべての神社に氏神様がいらっしゃるわけではありません。

例えば、観光地として有名な神社や、御朱印巡りで人気の神社は、必ずしもその土地の氏神様をお祀りしているとは限りません。学問の神様として有名な天神様や、商売繁盛で知られるお稲荷様をお祀りしている神社もあります。これらの神社も大切な信仰の場ですが、地域の氏神様とは役割が異なるのです。

地域に根ざした神社と全国的に信仰される神社の違いを理解することで、それぞれの神社への参拝の意味もより深く感じられるようになるでしょう。


自分の氏神様はどうやって調べるの?


氏神様は住所によって決まりますので、調べる方法はいくつかあります。

最も確実で温かい方法は、お住まいの地域にある神社に直接お尋ねすることです。電話でも構いませんが、可能であれば実際に足を運んで「この地域の氏神様について教えてください」とお声がけいただくと、神職が丁寧にご説明いたします。同時に、その神社の歴史や地域との関わりについてもお聞きできるかもしれません。

インターネットでの調べ方としては、「お住まいの都道府県名+神社庁」で検索すると、各地域の神社庁のホームページが見つかります。そこに地域ごとの神社や氏神様の情報が掲載されていることがあります。

昔からその地域にお住まいの方に聞いてみるのも良い方法です。近所の年配の方や、地域の町内会の方などは、地域の氏神様について詳しいことが多いです。そうした会話から、地域の歴史や文化についても教えてもらえるかもしれません。

大切な節目には氏神様にという考え方が古くからあります。お宮参り、七五三、厄除けなどの人生の大切な節目には、まず氏神様にご報告とお願いをするのが本来の習わしとされています。自分の氏神様を知っておくことで、こうした時により心を込めてお参りできるでしょう。


氏神様と崇敬神社はどう違う?


ここで「崇敬神社」という言葉についてもご説明します。これは地域とは関係なく、ご自身が特別に信仰している神社のことです。

氏神様は生まれ育った場所や現在お住まいの地域によって決まりますが、崇敬神社はご自身の意思で選ぶものです。「この神社に特別な思い入れがある」「この神様に特にお世話になっている」といった神社が崇敬神社になります。

例えば、受験の時にお世話になった天神様、商売を始める時にお参りした稲荷神社、旅行先で素晴らしい体験をした神社などが、皆様の崇敬神社になるかもしれません。

私は参拝者の方によく「氏神様は家族のような存在、崇敬神社は特別な友人のような存在」とお話しします。どちらも大切にしていただいて構いませんし、むしろ両方を大切にすることで、より豊かな信仰生活を送れると思います。

実際の参拝のコツ

長年多くの方の参拝を見てきて感じるのは、氏神様を知ってから神社参拝をする方の姿勢が変わることです。「今日も一日お疲れ様でした」という日常のご挨拶から、「新しい年をどうぞよろしくお願いします」という年始のご挨拶まで、より身近に神様を感じられるようになります。

引っ越しをした時は、新しい土地の氏神様にご挨拶をすることをお勧めします。「この度、この地域にお世話になります」というご挨拶をすることで、新しい土地での生活がより安心できるものになるでしょう。

旅行先での参拝も素晴らしいことですが、まずは日々の生活を見守ってくださる氏神様を大切にすることから始めてみてください。


まとめ


氏神様は皆様が今住んでいる地域の守り神であり、神社は神様をお祀りする大切な場所です。まずは地元の神社にお尋ねして、自分の氏神様がどちらにいらっしゃるのかを知ることから始めてみてください。

神社巡りや御朱印集めも素晴らしい信仰の形ですが、自分のルーツとなる氏神様を知ることで、神社参拝がより深い意味を持つようになります。氏神様も崇敬神社も、どちらも皆様の人生を豊かにしてくれる大切な存在です。

ぜひ一度、皆様の一番身近な神様である氏神様に会いに行ってみてください。きっと温かく迎えてくださるはずです。