2025/07/02 10:57

「厄除けのお参りに行こうと思うのですが、方位除けというのもあるみたいで...どちらを受ければいいのでしょうか?」

このようなご相談を、お正月から春にかけて本当によくいただきます。「厄除け」と「方位除け」という言葉は聞いたことがあっても、その違いや具体的な意味をはっきりご理解されている方は意外に少ないものです。

宮司として長年多くの方のご祈祷をお受けしてきた経験から申し上げると、どちらも私たちの人生をより安全で穏やかなものにするための、とても大切な祈願です。ただし、その目的やお受けいただくタイミングには明確な違いがあります。

「今年は厄年だから不安で...」「引越しを予定しているけれど方位が気になって...」そんな心配事を抱えていらっしゃる方に、少しでも安心していただけるよう、この記事では厄除けと方位除けの違いと、どちらをお受けになるべきかの判断ポイントについて、できるだけわかりやすくお話しさせていただきます。


厄除けとは?その意味と受けるタイミング


厄除け(やくよけ)とは、人生の中で特に災厄が起こりやすいとされる「厄年」を中心に、心身の健康と安全を祈願するご祈祷です。

厄年は、男性が数え年で25歳・42歳・61歳、女性が19歳・33歳・37歳とされています。特に男性の42歳と女性の33歳は「大厄」と呼ばれ、最も注意が必要な年とされています。また、厄年の前年を「前厄」、翌年を「後厄」と呼び、合わせて3年間は慎重に過ごすことが大切とされています。

実際にご祈祷をお受けになる方とお話ししていると、「なぜこの年齢が厄年なのですか?」というご質問をよくいただきます。これらの年齢は、昔から人生の転換期や体調の変化が起こりやすい時期として経験的に知られてきました。現代でも、仕事や家庭環境の変化、体力の変化などが起こりやすい年齢と重なることが多いのです。

厄除けのご祈祷は、年の初め、特にお正月明けから節分(2月3日頃)までの期間にお受けになる方が多いのですが、実は一年中いつでもお受けいただけます。「厄年に気づくのが遅れてしまった」という方も、どうぞご安心ください。神様への真心に早い遅いはありません。

ご祈祷では、一年間の無病息災・災難除け・家内安全などを祈願し、厄除けのお守りや御札をお受けいただきます。多くの方が「心配していたことが軽くなった」「安心して一年を過ごせそう」とおっしゃってくださいます。


方位除けとは?八方塞がりや凶方位を避けるご祈祷


方位除け(ほういよけ)は、引越し・転勤・新築・増改築・開業・結婚などの人生の大きな変化を控えている際に、その年の方位の影響で災いが起こらないよう祈願するご祈祷です。

古来より日本では、方位による吉凶を重視してきました。特に「八方塞がり(はっぽうふさがり)」の年は、どの方位に向かっても凶とされ、大きな変化や移動は慎重に行うべき年とされています。

八方塞がりは、男女共通で一定の周期で巡ってきます。具体的には、生まれ年の干支によって決まり、数え年で19歳、28歳、37歳、46歳...というように9年ごとに回ってきます。厄年とは別の概念ですので、厄年と八方塞がりが重なる年もあれば、そうでない年もあります。

方位除けをお受けになる方からよくお聞きするのは、「引越しが決まったけれど、方位が悪いと言われて心配で...」「新築を予定しているけれど、八方塞がりの年で不安」といったお悩みです。

現代社会では、仕事の都合や家庭の事情で、必ずしも良い方位を選んで行動できるとは限りません。そうした場合に、方位除けのご祈祷をお受けいただくことで、神様のご加護をいただき、安心して新しいスタートを切ることができるのです。

方位除けのご祈祷では、移転先の方位や時期に応じて、災いを避け、新しい環境での平安と発展を祈願します。引越しや新築の前にお受けいただくのが一般的ですが、すでに移った後でも効果があります。


厄除けと方位除けの違いまとめ|目的・対象年齢・タイミング


両者の違いを整理すると、以下のようになります:

厄除け

・目的: 厄年による災厄を避ける
・対象: 厄年に該当する年齢の方
・受ける時期: 年始から節分頃が一般的(ただし年中可能)
・祈願内容: 無病息災、災難除け、家内安全

方位除け

・目的: 凶方位や八方塞がりによる災いを避ける
・対象: 引越し・新築・開業等を予定している方、八方塞がりの年の方
・受ける時期: 実際の行動を起こす前、または八方塞がりの年の年始
・祈願内容: 方位による災難除け、新天地での平安と発展

どちらも「災いを避ける」という根本的な目的は同じですが、災いの原因が年齢によるものか、方位や行動によるものかという点で異なります。

重要なのは、これらは必ずしも一つを選ばなければならないものではないということです。厄年と八方塞がりが重なる年や、厄年に引越しの予定がある場合など、両方の条件に該当する場合は、両方のご祈祷をお受けになる方も多くいらっしゃいます。


どちらを受けるべき?迷ったときの判断ポイント


実際にどちらをお受けになるべきか迷われたときの判断ポイントをお伝えします。

厄除けを優先すべき場合

・今年が厄年(前厄・本厄・後厄)に該当する
・最近体調の変化や環境の変化を感じている
・漠然とした不安や心配事がある
・一年間の総合的な安全を祈願したい

方位除けを優先すべき場合

・引越し・転勤・新築・増改築の予定がある
・新しく事業を始める、転職するなどの大きな変化がある
・今年が八方塞がりの年に該当する
・結婚や家族構成の変化がある

両方をお受けになることをお勧めする場合

・厄年と八方塞がりが重なる年
・厄年に引越しや新築などの予定がある
・特に不安が強く、しっかりとご加護をいただきたい場合


私がいつもお伝えしているのは、「迷った時は遠慮なくご相談ください」ということです。神社によっては、一回のご祈祷で厄除けと方位除けを合わせて行うこともできます。また、それぞれのご事情をお聞きして、最適なご祈祷をご提案することも可能です。

大切なのは、形式にとらわれすぎることなく、ご自身が安心して日々を過ごせることです。「これで大丈夫」と思えることが、何より重要なのです。


オンラインでの厄除け・方位除け祈願も可能?


最近では、様々な事情で直接神社にお参りできない方のために、オンラインでのご祈祷受付を行う神社が増えています。

「遠方に住んでいて参拝が難しい」「小さなお子さんがいて外出が困難」「仕事の都合でなかなか時間が取れない」「体調の関係で外出を控えている」など、現代社会には様々な事情があります。

オンラインでのご祈祷でも、神職が心を込めて祈願し、お守りや御札を郵送でお届けしています。神様への真心に距離は関係ありません。遠くからでも、皆さんの安全と平安を心からお祈りしています。

ただし、可能であれば実際に神社にお参りいただき、神聖な空気の中でご祈祷をお受けいただくことをお勧めします。神社の静寂な環境の中で手を合わせることで、より深い安心感と清々しい気持ちを得られる方が多いからです。

オンライン祈祷をご希望の場合は、事前に神社にお問い合わせいただき、手続きの方法や必要な情報についてご確認ください。


最後に、宮司として皆さんにお伝えしたいこと


厄除けも方位除けも、決して迷信や古い習慣ではありません。長い歴史の中で培われてきた、人生を安全に歩むための知恵なのです。

現代社会は便利になった一方で、様々なストレスや不安を抱えて生活することも多くなりました。そんな中で、神様のご加護をいただき、心の平安を得ることは、とても大切なことだと思います。

厄除けや方位除けのご祈祷は、単に災いを避けるためだけでなく、新しい年や新しい環境に向かう決意を新たにし、前向きな気持ちで歩んでいくための大切な儀式でもあります。

どちらをお受けになるべきか迷われた時は、ぜひお気軽に神社にご相談ください。皆さんの状況やお気持ちをお聞きして、最適なご祈祷をご提案いたします。

一人ひとりの平安と幸せを心から願い、いつでも皆さんをお待ちしています。